テスト
とある日
Project by 九日舎
とある古道具屋で出会ったボロボロのコントラバス。彼はかつて、インテリアとしてカフェの片隅に置かれていた。
根本から折れてビスで固定されたネック、欠けたCバウツの角、外れた魂柱、そして剥がれた裏板。かつて音を奏でていたはずのその体に、もう一度息を吹き込むプロジェクトです。
始まりは中学生のとき、吹奏楽部で出会ったコントラバスでした。
ギターの演奏経験があったことでコントラバスを担当することになったものの、先輩もおらず、一人で情報を集めてじっくり楽器と向き合う日々を過ごしました。
そんな中、中学2年生の職場体験学習。決められた選択肢から選ぶのではなく、自ら大阪の「コントラバス工房ヨコノ」へ電話をかけ、直談判して受入れを承諾していただきました。
わずか3〜4日間の体験でしたが、職人の手によって楽器が息を吹き返す瞬間や、楽器という存在に対する深い敬意と思考を教えてもらったことは、その後の私の原体験となっています。
中学卒業後、コントラバスを演奏する環境からは一度離れましたが、音楽そのものへの情熱が消えることはありませんでした。
美術大学でデザインを学んだのち、地元の市役所へ就職。教育委員会で小中学校の物品調達、文化振興部署で市民吹奏楽団のコンサートや現代美術展の担当などを経て、現在はクリエイティブディレクターとして様々な企業やクリエイターとともに課題解決や空間・体験の創出に携わっています。
その傍らで、ギター、エレクトリックベース、マンドリン、ヴァイオリン、チェロ、リュート、二胡など、多様な弦楽器と触れ合い、構造や響きの違いを体感しながらプライベートでの音源制作や演奏活動を続けてきました。
クリエイティブディレクターとして誰かの「やりたいこと」を形にする日々の中で、私はどこかで自分自身の「本当にやりたいこと」を後回しにしていたことに気づきました。
「失敗するかもしれない」「環境や準備がまだ整っていないのではないか」——。
視覚障害があり車の運転ができないことや、自宅での演奏環境といったハードルを理由に、何度もコントラバスの再開を諦め、一歩手前で足を止めてしまっていました。
そんな折、個人活動の拠点として白亜荘の一室を整備しようと古家具店や古道具屋を巡っていたとき、運命的な出会いがありました。
古道具屋の隅で「インテリア」として売られていた、ボロボロのコントラバス。
古道具のセリで落とされ、数年間カフェの片隅に立てかけられていたその個体は、ネックが根本から折れてビスで無理やり留められ、魂柱はなく、Cバウツの角は欠け、裏板が剥がれているという満身創痍の状態でした。
その前日、家族と「これまで避けてしまっていたけれど、ずっとやりたかったコントラバスに向き合いたい」と話していた矢先のことでした。
その強い衝動が、止まっていた私の針を動かしました。
私の目標は、コントラバスの修理・修復技術を体系的に身につけ、信頼される技師(リペアマン)となり、将来的に自身の工房を持つことです。
専門機関での学習経験がなくても、車が運転できなくても、完璧な環境が今すぐ揃っていなくても、クリエイティブな工夫と発想で道は拓けると考えています。
このサイトでは、一本のボロボロなコントラバスが音を取り戻すまでの修復ドキュメンタリーや、日々の演奏・音源制作のプロセス、そして音と道具にまつわる思考を記録していきます。
音が蘇るその瞬間を、ぜひ共に見守っていただければ幸いです。
とある日
クリエイティブディレクター / マルチ楽器奏者
美術大学でデザインを学び、地方自体職員(教育・文化振興行政)を経て株式会社ロフトワークのクリエイティブディレクターとして勤務。その傍らで多種多様な楽器の演奏・音源制作を継続。現在は京都市左京区に構えた四畳半のアトリエ「九日舎」を拠点に、プロダクション活動やコントラバス修復に取り組む。
for nine days
クリエイティブディレクター國米翼による企画・デザインを中心としたプロダクション。課題解決から空間・体験の創出まで、クリエイティブな視点で様々なプロジェクトを手掛けています。
→ About for nine days
九日舎(ここのかしゃ)
京都・吉田の白亜荘22号室に構える、for nine days の事務室であり、音とことばを再構築する実験室。四畳半の小さな部屋から、新たな物語を紡ぎ出します。
→ 九日舎について
修復の進捗報告や日々の記録はInstagramにて発信しています。
プロジェクトへのご質問やメッセージは、InstagramのDMよりお気軽にお送りください。